東京工業大学

エンジニアリングデザインプロジェクト

エンジニアリングデザインコースの必修科目であり、約半年間をかけたPBL型の授業です

東京工業大学CBECプログラムでは、学生向けの講義に社会人の方々にも参加していただくことで、あらゆる境界を超えてチームとして世の中に新しい価値を生む力を育成し、その価値を実現する機会を持続的に提供することを目指しています。

本「エンジニアリングデザイン研究会」は、CBECプログラムの一部である「エンジニアリングデザインプロジェクト(EDP)」で得られた知見を共有・発展させ、企業のみなさまや社会に還元することを目的に発足いたしました。

1. 「デザイン思考を実践し新規ビジネス創出を試みたときに陥った罠」

東工大エンジニアリングデザインプロジェクトで学んだデザイン思考などの手法を、会社で1年間新規ビジネス創出業務で実践しようとした時に、つまずいた経験をご紹介します。

発表者:NTTコムウェア ビジネスインキュベーション本部 担当課長 渡辺 昌寛

通信系システム開発会社で、プログラマにあこがれながら、研究開発やビジネス創出を試み続けている。雑なプログラムを書くのが得意。2016年度 東工大エンジニアリングデザインプロジェクト受講。

Q&A

Q. ハッカーしかいないって時に、ハスラーなりを調達しようと考えたときはあったか?

  • デザイナーについては外部にお願いする予算を捻出した。ハスラーは社内新規創出というミッションでは、外から持ってくるのは理解がされにくい。今後はベンチャー企業との協業も社内ではしているのでそういうところ組むのもよいのかも。

Q. 1年間でやられた中で、うまくいってないな〜と思ったときは?

  • ほぼ常に「コレジャナイ感」に悩み、そこを抜けるにはどうすればいいのか?という感じだった。(最初仲が良すぎてdisれなかったけど)チームの仲が悪くなるくらいdisれるようにもなった。

Q. 途中から軌道修正は難しかった?

  • だんだん良くはなってきたが、本当のユーザーのペインを見つけるところまでは1年間ではいけなかった。

Q. チームのみんなで同じインプットをしたとかありますか?

  • 素でやるのは大変そうなので、馬田さんの本(『逆説のスタートアップ思考』)を読んだり、デザイン思考のワークショップをやったりした。インプットに関しては、航空会社の案件のときは、みんなで空港に行ってヒアリングをしたりした。

Q. 起業家マインドが身につかないのは普段の生活からちがうのかなあ?

  • 確かにそれは思う。起業に熱心なイケイケの人たちはネジが外れているところがあると思う。我々エンジニアとは思考スタイルが違う。ただ、それを取り入れる必要はあると思っていて、たとえばスタートアップの会社と組んで、リソースの貸し借りをやったりはしている。

2. 「ソフトウェアエンジニアがデザイン思考を活用する上で大切なこと」

ソフトウェア開発の現場において、東工大EDPで学んだことの活用事例の紹介をおこない、その中で大切だと感じたことについて発表します。

発表者:GMOペパボ株式会社 SUZURI事業部 プロダクトチーム シニアエンジニア 黒瀧 悠太

2012年に株式会社paperboy&co.(現 GMOペパボ株式会社)に新卒入社後、新規事業をはじめとした様々なWebサービスの開発に携わる。現在は自分だけのオリジナルグッズを手軽に作成・販売できるSUZURIの開発をメインで担当。

Q&A

Q. 最後の所で、デザイン戦略チームが推進しているという話があったが、教科書的に教えるだけだと「なんちゃって」で終わることになると思っている。体感みたいなところを教える上で、よい方法ありますか?

  • Googleのデザインスプリントを教える専門家がいて、その人に来てもらって、1つの事業部でワークショップをやった。会社には事業部が10個程度あるが、すべてのサービスに対して、その内容をデザイン戦略チーム(CTOの直下にある)が展開していった。
    • プロジェクトに入り込んでやっている?
      • はい。各サービスのマネージャにOKをもらって、デザイン戦略チームが実際にプロジェクトに入り込んでやっている。

Q. 気づきのところで「プロセスに従うだけではない」とあったが、これを気づくきっかけはどこにあったか。手順を知ってしまうと、それに安心してしまうことも多い。良いエピソードや気づきがあれば。

  • 自分のなかでは、EDPでデザイン思考のプロセスを学んだこともあって、最初はプロセスどおりやっていた。それでユーザーから「よくなったねー」と言われるのもあったが、先に自分でアイデアを考えてからユーザーに出してみたときに、「これ、いいです。お金払います」みたいなこともあった。それが気づき。デザインプロセスは問題の核心に迫るためのものであるが、場合によってはプロセスがなくても核心にたどりつけることもある。うまく視点が定められると、いけることもあると感じた。
    • 結果にこだわることは正しいとは思うが、結果が出ないときにすがるのが手順だと思って、質問させてもらった。

Q. サイクルチェンジャーの名前は、ストックを自転車でサイクルするところから付けられている?

  • 忘れてしまった……。
  • たぶんかかってます(角)

Q. 「ユーザのことを考えるけど、考えすぎない」は奥義のような気がしている。ヒントは得られるけど、結局は分かりようがない。かと言って、ひとりよがりではそんなに簡単ではない。これって、チームの中でどれくらい同じ域に達しているのか?

  • うちはウェブサービスがメインなので、ユーザの顔が見えず、データでしか見れない。その人がどういう人か見えないので、クリエイターの事務所に行って、話をしてみて、「こういうのが欲しい」とか、アンケートをとったりはしている。とはいうものの、ユーザの言う通り作っていくと、機能が増えすぎて何のサービスか分からないことも過去にあった。
  • ユーザの言うことは聞くけど、鵜呑みにはしない。そのために、会社ではサービスのビジョン(哲学的なところ)を文書に残している。「こういうことをやる、やらない」「うちらのサービスはここがかっこいい」といった内容。そこがブレるような時は、それ以外の方法で叶えられないかを考える。それが、チームの共通の認識になっているのではないか。
    • EDPでも、ユーザーの話を聞きすぎて「何がやりたいんだっけ?」という感じになっているところもあれば、逆に「話を聞かなくていいんだ」という開き直りもあったり、なかなか難しいので聞いてみた。

Q. 黒瀧さん自身が「圧倒的当事者意識」に気づいたとあったが、これは人を伝えるのが難しいと感じている。今までの中で、人に伝えた経験があれば教えて欲しい。

  • 自分でも模索中だが、やはり体験しないと出来ないと思っている。例えば、社内で歓迎会の幹事になったとする(うちの会社では幹事を任命するようなことはないが、あくまでも例として)。幹事は大変な役なのに、他の人たちは好き勝手に文句を言う。文句を言う人達には、幹事をやってみてもらうといいと思う。「その立場になって考えろ」と口で言うよりも、実際の立場に立ってもらうということをやってもらう。

Q. 最近、自作キーボードがなんで流行っているんだろう?

  • 何でだろう。ロマンがあるのかな。うちのインフラエンジニアの人たちは全員キーボードが違っていて、光ったり、音が鳴ったり、足で打ったりできるものを作っている。
    • キットが出たからなのかな?

C. Maker部の話があったが、あれはいいなと思った。新規事業部はこういう環境のあるところでやるべき。いきなり本番でやるとしくじる。毎日練習でやっているところに、新規事業部を作ると良さそう。素人が本番やってんじゃねーよと思う。あとはお金。同人誌のイベントやMaker Fairなどで、実際にモノを売ってお金を得るところまで体験しておくとよい。

C. 本人のやる気「圧倒的当事者意識」のところに共感した。以前、日産の子会社のxxxといっしょにイベントした時、そこは日産から出向してきた人がメンバーなのだけど、「業務時間内に自分で好きなことやってよし」というお達しが出た。ただ、自分の仕事はあるので、自分の仕事はメチャメチャ早くなって、余った時間でやりたいことをし始めている。という情報共有でした。

3. 質疑応答・議論

当日の様子を見ながら、質疑または会場での議論を実施します。

アンケートのお願い

今後の運営のために、研究会終了後にご意見をお聞かせください。

会場へのアクセス

参加者の声

得られたこと

  • デザイン思考を実践する上でのヒントと落とし穴に気づけた/キャノン(株)小川茂夫
  • 実践された方のナマの声を聞けたこと。ちょっと難しいかなと思っていたことは、やはり他の方も同じだった。どのように考えたか、何をしたのかの経験談は、貴重だと思います。
  • ユーザーへの共感と同時にトップ・上司や同僚への共感も重要であると気付けたこと。本番の前に何度も小さくチャレンジして鍛えておくことが大切と感じた。デザイン志向を学ぶ人間として様々な場面でトライしていきたい。/パナソニック(株)岡村勘太郎
  • 企業での取り組み事例。デザイン思考に興味があり、そのお話を聞けたこと。
  • 「ユーザー体験を重視するが考えすぎない」という当事者の経験談はすごく参考になりました。
  • 社内でデザイン思考をとりいれるときのコツ
  • プロダクトを創出するうえでの哲学、人の動かし方
  • 考え方や手法は周知されつつあるものの、実践まではまだまだ難しいのだなと思った
  • 共感からはいらなくても良い。5ステップは行き来が大事。ユーザーのことは考えて考えすぎず、一つのフェーズにこだわりすぎない!/パナソニック(株)相田亮
  • 社内にデザインドリブンの動きを根付かせていくためのヒントがありました
  • デザイン思考もプロセス間を移動して視点を変える洞察を得ることが大事と理解しました/株式会社GxP 髙田康宏
  • 他社の事例が聞けてよかったです/GMOペパボ(株)黒瀧悠太
  • 新規事業は素人で始めるといいかも!/NTTコムウェア 渡辺昌寛
  • 社内にデザイン思考を広めていく戦略・アイデア

今後に期待すること

  • 企業とデザイン思考の関係をもっと知りたい。参加費は個人参加として払える金額で……。
  • 継続して体験談がよいかと思います。2〜3ヶ月に1度。3000円以下。
  • 何度でも参加したいので積極的な開催を期待します。
  • デザイン思考のプロセスについて、それぞれのノウハウを詳しく知りたい。
  • 作られた具体的なプロダクトやサービスを知りたいです。
  • ワークショップ。プロセスの体験をしながら共感してみたい。
  • 参加費がかかってもいいので、実際にモノをつくるプロセスを体験したい。
  • 毎回おもしろいです。デザイン思考実践の苦労話集を出してほしい!
  • 今の頻度はほどよいと思います。マネージャ層と若手層を混ぜていただくのも視点のち外があってよいと思います。
  • 実際にプロダクト開発をしていて、デザイン思考のどんな考え方/ツールを使っているか、その結果得られた気付きとか
  • 2か月に1回、参加費は1000円以上でよいと思います!
  • 場所は近いほうが……

謝辞

Q&A部分は、講演者のお二人からご提供いただいたメモを編集しました。