東京工業大学

エンジニアリングデザインプロジェクト

エンジニアリングデザインコースの必修科目であり、約半年間をかけたPBL型の授業です

東京工業大学CBECプログラムでは、学生向けの講義に社会人の方々にも参加していただくことで、あらゆる境界を超えてチームとして世の中に新しい価値を生む力を育成し、その価値を実現する機会を持続的に提供することを目指しています。

本「エンジニアリングデザイン研究会」は、CBECプログラムの一部である「エンジニアリングデザインプロジェクト(EDP)」で得られた知見を共有・発展させ、企業のみなさまや社会に還元することを目的に発足いたしました。

1. 「保身的大企業サラリーマンが、“意図的に失敗し、学ぶ”を覚えから変わった5つのこと」

「失敗から多くのことを学べ」大企業の上司は口をそろえてこう言います。しかし、多くの社員は、失敗をしません。それどころか、無難な道を歩み、結果無難なものばかりが生まれていく。そんな経験皆さんにもないでしょうか。本講演では、典型的保守的社員が、CBEC活動を通じて知った本当の失敗から学ぶことと、大企業でも、積極的に失敗する(その後良い成果を出す前提ですが・・・)ために大事なことを、経験則に沿ってお話します。自分自身が新しい人はもちろん、部下に新しい取り組みをさせたい人におすすめです。

発表者:サントリーコミュニケーションズ株式会社 デジタルマーケティング本部 神尾 英俊

2011年株式会社NTTデータに入社。法人向け大規模システムの保守・運用のエンジニアとして従事後、コンサルティング&マーケティング本部に異動。異動後は、デジタルマーケティングのコンサルタントとして、小売り、医薬、放送、旅行業など様々な業界におけるwebデータ解析、DMP導入支援、など様々デジタルマーケティング施策・新規サービス開発に携わる。2016年には、社内イノベーション創出のきっかけ作りのため、東工大アントレプレナーシッププログラム(CBEC)に、社会人学生として一年間在籍。デザイン思考やイノベーション理論、UX基礎などを学ぶ。2018年に、NTTデータを退職し、サントリーホールディングスに転職。自社開発したプロダクトを用いたデジタルマーケティングの推進のため、サントリーコミュニケーションズ株式会社デジタルマーケティング本部に出向し、現在に至る。

Q&A

Q. 「バカな発言をして失敗しろ」と言うと言葉が長い。自分の年代だと「送りバントしてんだよ」と言う。もし神尾さんが言うなら何だろう?

  • 直球で「バカになろう」と言っている。みんな賢い。高学歴でお利口さん。「バカ」と言われる経験がない。「バカになれるとカッコイー」と後輩にいっていたらそういうことが許される風潮になった。自分に取って「バカ」は褒め言葉。

Q. 起爆して心が折れることが多いが、それでもまだ頑張れるコツがあれば。

  • 「なぜバカが受けなかった」のか。本部長に「心は折れるものではなく自分で折るものだ」と言われたのではっとした。エッセイをドラクエ風に作って2Dの画像で作って持っていったら「バカ」と言われたこともある。ただ、会議でバカになるのはなかなか難しい。自分で折らないと思えなければ折れない。

Q. 最後の左脳と右脳の行き来があって大賛成だが、会社が右脳に偏った発言をするのはタイミングが重要かと思うが。何かあるか。

  • 前職では大多数は左脳で、部内で右脳で考えられるの自分だけだった。現職は右脳が多いので、地に足ついてないときに左脳に戻すようにしている。
    • まったく感覚知だと思うが、これも経験するしかないですよね。

Q. バカになるのを一人で出来るのは才能だと思うが、それを組織で出来るのは別のスキルでリーダーシップなど関係すると思う。それを組織的に出来るためのアイデアがあれば教えて欲しい。みんなが神尾さんになるにはどうすれば良いか。

  • いま自分がいる空間が特殊で、「おもしろいことを言う人はいいよね」という雰囲気。前の部署では出来なかったと思う。うまい回答がない。
    • そういう雰囲気はもともとそうなのか?組織がそうさせるのか?
      • 自分がよくやるのは成功例を出すこと。Amazonはpptを持っていかず紙1枚で会議をやるとか、そういうジャブを打って、「半年後にそろそろ言っていいかな」という雰囲気を作った。
        • それを「リーダーシップ」と言うと思う
  • 新入社員と一緒にイノベーションについて考えている

C. まだブログに記事を書いてないのでお願いします。この発表をそのままブログに落とせると思う。

Q. この話を会社にしたことある?

  • 今日来る前に、初めて会社でやってきた。前の会社でもお偉いさん向けにやった。
    • どういう反応だった?
      • 右脳と左脳は良い反応。「ロジカルに考えるのは重要だけど、つまらないものが出来る」というのがある。
        • どうトレーニングすれば良いかという話もある。大学でそういうコースも用意するのもいいな … :)

C. 自分のアナロジーでは、研究者のやり方と似ていてびっくりした。成功する要素として「素人発想・玄人実行」がある。それを書いたCMUの金出先生の『独創はひらめかない』という本はKindleで復刊した。おすすめ。

2. 「NTTコミュニケーションズが取り組むデザイン経営やイノベーション創出活動にまつわる話とEDPの活かし所」

EDPでの学びをベースとしつつ、今までどういうプロジェクトでどういう活かし方をしてきたか。そして今何をしているか、特に鋭意取り組み中のデザイン経営や新事業創出活動を絡めつつお話したいと思います。

2018 11-13 デザイン経営やイノベーション創出活動にまつわる話 from Yuhei Iwata

発表者:NTTコミュニケーションズ株式会社 経営企画部 デジタル・カイゼン・デザイン室 シニアUXデザイナー 岩田裕平

NTTコミュニケーションズ株式会社 経営企画部 デジタル・カイゼン・デザイン室 シニアUXデザイナー 2013年NTTコミュニケーションズへ入社後、約3年半の間グループ会社でR&Dや新サービス開発、デザイン・ブランド戦略に従事。2017年より経営戦略としてデザイン思考を推進するプロジェクトにジョイン。2018年より社内ベンチャー制度を利用し、新事業のプロダクトオーナーとして事業創出中。HCDプロセスを用いた新事業創出を得意とする。経済産業省主催「始動Next Innovator」3期生選抜メンバー。HCD-Net 認定人間中心設計専門家。2015年に東工大CBECを修了。

Q&A

Q. 「人生レベルで内省して、心からやりたかったことを思い出す」が響いたので、具体的にどのような本でワークショップをしているか教えて欲しい。

  • Stanfordの入学試験のエッセイで「あなたの大事なもの」「心からやりたいこと」を問うものがある。自分のやりたいことから分野を越境することで、デザインスクールのd.schoolが出来たのだと思う。やらされ仕事で、やりたくないのにマーケッターがやってる人もいる。そういう人は、デザイン思考をやっても変わらないのではと思っている。そもそも根本を変えないといけない。
  • IDOMの方が書いた『成長マインドセット』という本を参考にした。自己啓発本に見えるが、こういうアクティビティをなぜしたいかと言うと、ワークを通して内省してもらいたかったから。
    • 自分の周りにそのレベルで響かせるのは難しいが、何かコツはあるか?
      • 若手はやり直せる。在籍10年くらいまで。それ以上は難しい。私が言っても「どうせ若手が言ってることでしょ?」と見られる。私も解決策はわからないので、みなさんと一緒に悩みたい。

Q. 社内で部署を異動したと言っていたが、新しい部署には何人いるか?

  • 経営にデザイン入れていこうといしているのは15人くらい。
    • 岩田さんがそれを引きいている?
      • 上にマネージャがいる。マネージャもそういうの(デザイン)をやっていた人間で、良い人間が集まっている。

Q. 自分も企業のデザイン部署に属していて「新しいもの創って」という無茶ぶりがくる。デザイン思考でやりたいが、一人でやるのは難しいと思っている。集団で動くコツを教えて欲しい。

  • 自分も悩んでいるが、「オペレーショナルになってはいけない」と思う。一人リーダーシップがあっても、まわりが自己実現出来ていないと意味がない。チームのバリューを考える。それぞれ何をやっているのかが重要。合宿をやったりしてチーム力を高めている。半期に一回やっている。チームビルディングでボードゲームを取り入れたり。楽しい所も共有すべき。

Q. 「顧客志向経営」がやりやすいのは既存顧客だと思うが、一方でまったく新しい顧客を見つけることも重要だと思う。どうやって呪縛から逃れて、新しいユーザに目を向けるのか?

  • 既存顧客がXだとして、Xと仕事をしていない別のチームが新しい仕事を始めるというのはやっている。また、このXにもYという顧客がいて、別の価値を与えていることがあると思っている。B2B2Xのエンド。間のXにアピールしながら、そこまで見据えてやっている。
    • そうすると、自社の多様性を高めて、違う観点で見ないといけないですよね
      • まさに。当社は新卒一括採用なので多様性がとても低い。外部の人にも入ってもらっているが、まだ足りない。それが一番の課題。

Q. デザイン思考じゃなくてもいい、というのは本当にそう思う。ちょうど先週の授業でも「デザイン思考から自由になってもいい」と言ったところだ。インスピレーションをどう取ってくればいいかなど、アート思考について何かあるか。

  • その一つとして、前述の内省プログラムがある。そもそも何を成し遂げたいのかを考えてもらう。「意味のイノベーション」というやつかもしれない。まだプロダクトにはつながっていないが。
    • そういうのを入れていくと、日々感じが違ってくるか?意外と「そもそも自分はなぜ働いているのか」とか、普通の人は考えないと思うので。
      • 自分のまわりの数人は若干変わったとは思うが、波及したかというとまだまだ。

Q. 岩田さんのビジョンは何か?

  • 会社に就職する前、大学で素粒子物理をやってるときからそうだが、社会や人類を拡張することに興味がある。キリスト的にはまだ2,000年だし、生命は40億年の歴史がある中で、今後人類はどうなるのかを創っていきたい。人類をupdateするために動きたいと思っている。

Q. 当社も社内のイノベーションをやっていて、先ほどのPlaybookのようなものも作っている。だが、裾野が広いので、どの辺の人を対象にすべきかが難しい。誰を想定して書いているかを教えて欲しい。

  • 弊社ではサービスに携わる人(企画・開発)、オペレーション(カスタマーサポート等)、セールス(いわゆる営業)、スタッフの4つの職がある。それぞれの職種におけるjourneyにおいて、どうやってリーンな考え方が使えるのかを書いている。それぞれの組織から各年次(シニア、中堅、若手)にインタビューしながら、3~4周プロトタイピングとテストを繰り返して書いた。
    • 大変そうだが、1年くらいかかった?
      • 1年はかかった。ただ、うまく使われているかはまだ怪しいので、今後もブラッシュアップしていこうとしている。

3. 質疑応答・議論

当日の様子を見ながら、質疑または会場での議論を実施します。

アンケートのお願い

今後の運営のために、研究会終了後にご意見をお聞かせください。

会場へのアクセス

参加者の声

得られたこと

  • 「自分は何のために生きているか?」内省します!/NTTコムウェア 渡辺昌寛
  • 個人ベースと組織的なデザイン思考の広め方の違いを感じました。より効果の高い成果を出すには、会社を巻き込む力と、何よりマインドの醸成が大事と感じた。
  • 人脈、各社のデザイン思考実践例/(株)デンソーデザイン部 山本博之
  • デザイン思考の組織への展開について、さっぱりどうしたら?と思っていたが、自分たちのやりたいことを言語化していくことが第一歩と気付きを得た/キャノン株式会社 小川茂夫
  • INNOVATIONを起こそうといろいろなところで活躍されている
  • デザイン思考を企業で活用するための方法
  • 「自分のビジョンについて内省する」ことの大事さとそれがイノベーションの源泉となることを学びました。/NTTデータ 堀越永幸
  • まずはやってみる事が大切だと再認識しました。共有→共感→共考→共創のサイクルを明日から回します。
  • デザイン思考を会社へ適用させる時のケーススタディ。デザインは「思考」なのでポジティブさがないといけないということ。/ATC 吉田篤史
  • 人を見る、人を理解することが重要なんだと、再確認できた。それは上司の口グセだからついてきてよかったと感じた。
  • 右脳・左脳についての話がおもしろかった。あえて意識した上で会議等で話してみたい(自社で)。
  • 「デザイン思考」という言葉がひとり歩きしそうになっていること。それを踏まえた上での活動の仕方。
  • 実務・経営と様々な視点からの講演を聴くことができた
  • 実際にEDPでの学びを会社にかなりの労力で展開する挑戦をしている人がいると知れたこと
  • デザイン思考を学んだ先の実体験のお話が特に印象に残っています。会社の中でも、デザイン思考をどう使うか、広前るか悩んでいるという事を知れてよかったです。
  • 大企業でのイノベーションに向けたアプローチの先進例、課題への取り組みについての事例

今後に期待すること

  • 「デザイン思考」をビジネスの現場、企業・組織へどう活用・定着させるかについて、ノウハウを聞きたい
  • もっと参加したい
  • もっと近くで開催して欲しい
  • スタートアップxデザイン思考の事例
  • デザイン思考のその先について(今日もアート思考とかスペキュラティブデザインに近いお話がありましたが)客観的に見てどうなのか、知りたいです
  • デザイン思考を適用できなかったケース
  • 前を走る人の背中を見ながら、自分自身の行動へ反映していきたいので、継続的に開催されるとうれしいです。参加費は個人負担のできる範囲で……。
  • 参加された方の実体験や、どのように応用して活かしたかなどのお話が伺えると嬉しいです。
  • 参加者同士の交流
  • 場所が近いほうがありがたいです(田町キャンバスなど)。有料でもうれしい。
  • 手法、マインドセットの浸透のさせかた
  • 日本の経営者にもっと知って頂く活動を。その結果どんなことが生まれたか、シェア出来る範囲で。
  • 発表を話題提供として、グループディスカッションをしてもよいかと思います。
  • 齋藤先生の講義も聞きたい

謝辞

Q&A部分は、NTTコムウェア渡辺昌寛さんからご提供いただいたメモを編集しました。